日本単独歩行記

ただの歩いた記録

日本縦断 44日目
女木島〜直島〜岡山県

昨晩は割と飲んだので、起きると少し頭が重かった。コップにはまだウイスキーが少し残っている。捨てるのももったいないので、迎え酒として飲み干した。

今日は一度高松に戻り、そこから再度フェリーで直島へ向かう。フェリーまで時間があったので、女木島を半周回ってみる事にした。

島に着いた時に貰った地図には島の地形図が載っていたので、地形を確認しながら歩いてみた。島は予想以上に小さく、あっという間に北側の港に出てしまった。

港から続く斜面には畑が並んでおり、何かしららの植物を育てているようだった。そしてその何かしらの花がちょうど咲き始めており、クマンバチがたくさん飛んでいた。

そこからつづらに折れた道路を歩き、島の峠にでた。ここからさらに展望台に向かって遊歩道を登っていった。イノシシ注意との看板が出てたので、若干警戒しながら歩く。

展望台まではわりとすぐに着いた。やぐらがひとつ立っていて、そこに登ると島をすべて見渡せた。少し降りたところ休憩所と自販機があったのでここで朝のコーヒータイムとした。

そのあと港に下りて高松行きのフェリーに乗った。高松で降りてから次のフェリーまで1時間余裕があったので、スーパーまで朝ごはんを買いに行った。

時間が来たのでフェリーに乗り込んだ。次は直島に向かう。直島ではまず風呂に入って、地中海美術館でモネの睡蓮やその他美術作品を鑑賞しようと思う。

直島行きのフェリーは看板が広く、座席もゆったりと配置してあったのでとても気持ちよかった。乗船時間は50分ぐらいで充分に航海を満喫できる。

徐々に直島の港が近づいてきた。さらに距離が近づくと、赤いかぼちゃがまず目に入ってくる。黒い斑点の着いた毒毒しいかぼちゃだ。僕は美術作品に対する審美眼がまだ弱いので、この手のやつを見るとぽかーんとなってしまう。なぜかぼちゃなんだ??

とりあえず島にはこういった感じで作品が点在しているらしい。芸術祭の期間中で相変わらず人が多いが、この直島は特に外人が多かった。女木島では見かけなかった欧米人がたくさん来ていて、レンタルのママチャリにまたがる姿がなんともシュールでおかしかった。

まずはI♡湯という銭湯に向かった。もし客が少なかったら入ろと考えていた。地図の案内をみながら少し路地に入ると、すごくポップで奇天烈な外観が突拍子もなく現れた。これがI♡湯だ。

入り口に入るとすぐ正面に番台がある。番台のカウンターのなかにおばあちゃんが一人、カウンターの外側におじいちゃんが一人という布陣であった。とりあえず空いているか聞いてみる。

オープンしたばかりでまだ一人しか入っていないということだったので、入浴券を買ってお邪魔した。入浴券は650円。アートワーク鑑賞を兼ねている銭湯なのでなかなかお安い値段だと思った。

ザックは脱衣室の邪魔にならない場所に置き、貴重品のみロッカーに入れ浴場に突入する。まず一番に目に入ったのが男風呂と女風呂を跨ぐように置かれた象のオブジェだ。男風呂と女風呂を仕切る壁の上部、吹き抜け部分に収まるかたちでドンと乗っている。なぜ象なんだ?

浴槽は正面入ったらど真ん中に設置されており、左右の壁に水栓が設置されてある。正面の壁上部にはアートワークがほどこされ、下部はガラス張りになっており奥にはサボテンなどの観葉植物が置かれている。

とりあえずカラダを洗うべく水栓の前に腰かける。水栓もよく見ると独自でデザインされているものだった。シャンプーとボディーソープがボトルに入って置かれていたが、このボトルも独自のデザインだ。とにかく隅から隅までデザインされていた。

カラダを洗い終え浴槽に浸かると、浴槽の底にもなにやらアートワークがある。浮世絵や雑誌・新聞の切り抜きみたいなのをコラージュした作品だった。

浴槽で足を伸ばし上を見上げると、天井一面にほどこされたアートがバン!と目に入る。乳白色のアクリル板に、鮮やかな色でペインティングがほどこされている。おそらく半透明のアクリル板なので、外光によって鮮やかさに変化が産まれる。

銭湯内にはなにやら不思議な音楽も流れていて異世界感が半端ない。アートの島にある銭湯だからまだ理解できるが、ただの知らない町でこんな銭湯に出くわしたら怖いだろう。

ゆっくり湯につかりながらアートを観察した。一見するとポップで可愛らしい感じもするが、細かい部分にエロ要素が散りばめられている。浮世絵のコラージュなんかもはやエロ本の切り抜きだ。あとは女性の身体を連想させる言葉やデザインがところどころにあった。

ひと通り観察し終えると、今度は女風呂がどんな作品になっているかが気になる。これも作品のねらいのうちの一つだろうか?唯一あの真ん中にいる象だけが両側を見下ろすことができる。

いい加減のぼせそうになってきたので風呂をでた。湯加減はちょうど良かった。バスタオルなんか持ち歩いていないので、脱衣所の扇風機で身体を乾かした。

身体もさっぱりして清まったので今度は地中美術館に向かった。せっかく汗を洗い流したので、新たに汗をかかないようにゆっくり歩いた。

地中美術館はオンラインでの予約が必要だった。今回は16時15分からのオンラインチケットを購入しており、地中美術館近くのチケットセンターで10分前からチケットの交換ができた。

チケットセンターは外国の人がたくさんいた。おそらく7割ぐらいは外人だったと思う。そのうちの半分ぐらいが欧米人だったので、欧米人の人はこの地中美術館目的の人が多かったようだ。

地中美術館は建物自体が美術作品である。こういった建物に入るのは生まれて初めてだと思うのでワクワクする。チケット交換の時間がきたので受付の列に並んだ。

チケットセンターから美術館に向かう歩道脇に睡蓮の池が作ってある。いい感じで西陽もさしていたのでとても綺麗だった。

地中美術館は名前の通り地中に埋まっているので、外観というものはほとんどない。入り口から入り口門までコンクリートの壁が立っているぐらいだ。入り口門でチケットを渡して中に入る。

外観がないという事で、中の構造とかは一切見当がつかない。とりあえずコンクリートで囲った暗い通路を進む。角をひとつ曲がると天井が吹き抜け一気に明るい通路となった。

この建物でまず面白いなと思ったのはこの吹き抜けである。建物自体が外から見えないよう地中に埋めて作っているので、中から外を見上げると外界の物が一切視界に入らないのだ。見えるのはその日の空だけ。

さらに進むと今度は三角形に吹き抜けた空間に出る。ここでも空だけが綺麗な三角形に縁取られる。いつも見ている空なのに違う物を見てるような錯覚感があって不思議だ。

そしてこの三角形の壁面下部には約30センチぐらいのスリットが螺旋に抜けていてスリットの奥に螺旋の通路がある。この綺麗に抜けるスリットを作るのは大変だったろうなあと思った。デザインのことより、どうやって作ったのかが気になった。

そのあとまずモネの睡蓮を見た。入り口を入るとまず手前に暗い空間があり、奥の明るい空間には大作の睡蓮がしずか佇んでいる。明るい部屋には白地の壁にモネの睡蓮の作品5点が配置されていた。光は自然採光なので時間によっても明るさが変わるそうだ。

しばらくモネの作品に見入ってみる。この睡蓮はとても静かな作品だと感じた。周りに人がいなかったらもっとこの静けさに没入できると思う。人が少ない時期にもう一度見に来ようと思った。

モネを見たあとはその他の空間芸術作品を順繰り見たが、どれも静かな作品だった。初めて空間芸術というものに触れたが、それぞれの作品ごとで異世界に飛ばされるような錯覚があり面白かった。目隠しされていきなりここに連れてこられたら相当ヤバいと思う。

帰りに美術館の売店に立ち寄った。いろいろ土産品が並んでいる中に、文庫版の星の王子さまが置いてあった。この本を、この前2年ぶりに再会できたある人に勧められていたのを思い出した。文庫版だしこれは旅に持って行けということだなと解釈し、購入した。

美術館を出て、港までの帰り道は夕日がとても綺麗だった。港に着くと赤いかぼちゃも綺麗に照らされていた。かぼちゃの周りの人たちは楽しそうにはしゃいでいる。

この後はフェリーに乗って宇野に移動した。宇野に着いたら、晩飯を調達して近くの公園でテントを張った。

明日からは少し集中して歩きたいと思う。次は鳥取大山を目指す。

歩いた距離・10㎞

使ったお金・6000円

直島のカボチャ
直島のカボチャ

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